■扁桃体の活動性は心血管イベントを予測する ストレスがリスクを増やすメカニズムの仮説

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ストレスが心血管疾患のリスク上昇に関係することは知られているが、その機序は明らかではない。米Harvard大学医学部のAhmed Tawakol氏らは、18F-FDG(フルオロデオキシグルコース)PET/CT を用いた画像診断による縦断研究と横断研究を行い、追跡期間中に心血管疾患を起こした患者では、扁桃体、大動脈、骨髄へのFDGの取り込み量が多かったと報告した。結果はLancet誌電子版に2017年1月11日に掲載された。

 扁桃体の活動性は、PTSD、不安、鬱などストレスフルな状況において上昇する。ストレスに関係する神経回路の活性化は、機能的MRIと18F-FDG PET/CTを用いれば画像化できる。そこで著者らは、扁桃体の活動性が、造血活性と動脈の炎症に関係し、心血管イベントの発生を予測するという仮説を、18F-FDG PET/CTを用いて検討することにした。

 そのために、2通りの補完的なイメージング研究を実施した。安静時の扁桃体の代謝活性、骨髄の活動性、アテローム硬化性の動脈炎の状態を記録しておき、その後の心血管イベント発生との関係を調べる縦断研究と、本人が知覚しているストレスの程度と安静時の扁桃体の代謝活性や動脈炎の関係を調べる小規模な横断研究を行った。

 縦断研究の対象になったのは、主に癌のスクリーニングを目的として、米国Massachusetts総合病院で、2005年1月1日から2008年12月31日までに18F-FDG PET/CTを受けた6088人の中から、心血管疾患、急性または慢性の炎症性疾患、自己免疫疾患などにかかっておらず、活動性の癌でもない30歳以上の人々で、頭部を含む画像診断の記録が利用できる人を選び出した。 

 条件を満たした293人(年齢の中央値は55歳、四分位範囲は45.0~65.5歳)を、中央値3.7年(2.7~4.8年)追跡したところ、22人が39件の心血管イベントを経験していた。22人の最初のイベントは心筋梗塞8人、不安定狭心症3人、末梢動脈疾患2人、脳卒中6人、心不全1人、新たな狭心症の発症2人だった。

 扁桃体の活動性は心血管イベントリスクに関係しており、FDGの取り込み量が1標準偏差分上昇すると、イベントのハザード比は1.59(95%信頼区間1.27-1.98)だった。しかし、大脳や小脳など扁桃体周辺組織のFDG取り込み量は、心血管リスクには関連していなかった。

 また、扁桃体の活動性は、骨髄の活動性の上昇(相関係数0.44)と、大動脈の炎症(0.49)、頸動脈の炎症(0.47)などと相関を示したが、コントロール部位の皮下脂肪とは関連がなかった(0.02)。

 慢性的なストレスの負荷が高かった患者(13人)を対象とする横断的研究でも同様の結果が得られた。それらの患者の扁桃体の活動性は、動脈の炎症炎と関連を示した(相関係数0.70)。加えて、患者が知覚していたストレスは、扁桃体の活動性(0.56)、動脈の炎症(0.59)に加えて、CRP値(0.83)とも関連を示した。

 これらの結果から著者らは、扁桃体の活動性は心血管イベントの独立した予測因子であり、その一部は造血活性や動脈の炎症を通じて影響を与えていた。これは情動ストレスが心血管疾患に及ぼすメカニズムに新しい知見をもたらすものだと結論している。

 原題は「Relation between resting amygdalar activity and cardiovascular events: a longitudinal and cohort study」、概要はLancet誌のウェブサイトで閲覧できる。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(16)31714-7/abstract

資料 TMSジャパン
大田区蒲田 発達障害研究所